概要

研究科長・学部長挨拶

学際的・国際的なフィールドで
未来の教育・未来の社会をデザインする


東北大学 大学院教育学研究科長・教育学部長

小嶋 秀樹KOZIMA, Hideki

小嶋 秀樹

 教育学部長・教育学研究科長の小嶋秀樹です。

 東北大学教育学部は,いまから75年前の1949年にスタートしました。その歴史を振り返りますと,教員養成課程を内包していた時期から始まり,さまざまな変遷・変革を経て,現在では,大学院博士課程として前期2年の課程,いわゆる修士課程と,後期3年の課程,いわゆる博士課程を持つ,教育学研究に特化した日本でも屈指の教育研究機関に発展しています。また最近では,2018年に情報科学・認知科学・統計科学などを扱う部門を新設し,文理にまたがる学際的な視点から,教育に関するさまざまな研究を推進するようになりました。

 それでは,東北大学教育学部ではどのようなことが学べるのでしょうか。教員養成を目的とする大学では,子どもに教えること,その理論と実践を学ぶことがメインになります。一方,東北大学教育学部では,教育という営みを深く理解することと,そこから未来の教育をよりよい形でデザインしていくこと,またそれをとおしてよりよい社会を築いていくことを追究していきます。教育とは何か,それに関わる人間とはどういう存在か,そこから形づくられていく世界とはどのようなものか,これらが私たちのメインテーマです。

 そもそも教育とは,人類にしか見られない営みです。親が子を教える。先生が生徒を教える。また,子は親や先生から教わる。そのような積極的に教える・教わるという営みによって,人類は物語や道具をつくり出し,世代を超えて蓄積することで,豊かで多様な文化をつくりあげてきました。そのような教育という営みが,どのような歴史をもって発展してきたのか,どのような制度によって動いているのか,貧困や紛争によって教育はどのような影響を受けるのか,どう対処すればよいのか。また,教える・教わるという営みを支える人の心理はどのような仕組みをもっているのか,発達障害などでその仕組みがうまく働かない場合はどうなるのか,どうすればよいのか,といった,さまざまなクエスチョンが浮かんできます。それらクエスチョンを解き明かし,そこから未来の教育をつくりあげていく,それが東北大学教育学部のミッションです。

 また,最近発展が著しい生成AI,これをどのように教育と接続していくべきかも,喫緊の課題となっています。東北大学教育学部には,AI・機械学習・脳科学・ロボットなどを専門とする先生方もいます。これらも未来の教育をデザインするために欠かせない視点となるでしょう。教育という営みに,文理にまたがるさまざまな視点から学際的にアプローチできるのが,東北大学教育学部の特色になっています。

 加えて,東北大学教育学部および大学院教育学研究科では,国際的な学びの機会を積極的に提供しています。たとえばアジア・エデュケーション・リーダー・コースでは,アジアの教育系5大学の学生が一か所に集まり,英語による授業をともに受けるという取り組みを進めています。また,ユネスコなど,教育に関する国際機関との連携も深めています。海外の国際機関でのインターンシップに参加する学生も出てきました。

 このように教育学部・教育学研究科の活動は,文理を越え,国境を越え,さまざまな広がりを見せています。

 教育は人類にしか見られない営みですが,人類であれば世界のどこに行っても教育は存在します。みなさんの興味は,人間の心にあるのかもしれません。人間が集まった社会や文化にあるのかもしれませんし,その過去や未来にあるのかもしれません。人間であることと教える・教わることは切っても切れないものです。この教育という営みを,いろいろな角度から探究してみませんか? そして未来の教育を,未来の社会をデザインしてみませんか? この知的な冒険に,みなさんとご一緒できることを願っております。