
自ら手を伸ばせばチャンスは無限大。
ここから世界へ飛び立ち、
国際的な教育やジェンダー問題に
取り組んでいきたい。
TORISAWA Ui
東北大学教育学部 教育学コース
TORISAWA Ui
鳥澤 侑生
2024.3.29
世界には質の高い教育を受けられない子どもがいることを知った。
━━東北大学教育学部を志望した理由を教えてください。
東北大学の教育学部を志望したのは、教育そのものについて学ぶことができ、また国際交流にも力を入れている環境だったからです。高校時代、お世話になった担任の先生からのすすめもあり、AOⅢ期試験を受けて入学しました。
━━教育学に興味を持ったきっかけがあったのでしょうか。

小学校高学年のときに、マララ・ユスフザイさんというパキスタン生まれの女性の本を読んだことがきっかけです。彼女は、幼い頃から女子教育推進に向けて活動していて、ノーベル平和賞も受賞しています。マララさんの本を読むまでは、性別に関係なく学校に行って勉強をすることは当たり前だと思っていましたが、世界には「女の子だから」という理由で教育が受けられない子どもがいることを知り、衝撃を受けました。これが、教育やジェンダーなどの国際的な課題に興味を持つようになったきっかけです。
中学生になると、語学研修でオーストラリアに行ったり、英語の弁論大会に参加したりと、英語でのコミュニケーションにも力を入れるようになりました。 高校生のときには模擬国連に参加。また、世界の女性・女児の地位向上を目指す団体が主催する「国際ソロプチミスト・ユース・フォーラム」の予選を経て、全国の女子高生や女性研究者と意見を交わしたこともあります。
こうした経験を通して、世界中の同年代の人たちと意見を交わし、世界の教育の実情や、日本がジェンダー分野において大きな遅れを取っている現状に気付かされました。
努力が結果につながらないときは方法や方向性を見直してみる。
━━中学生・高校生時代はどんなことを意識して勉強していましたか?

高校時代までの経歴を振り返ると、とても恵まれた環境だったように思われるかもしれません。家族からの応援や先生方が差し出してくださるチャンスのおかげで、今の私があると思っています。
ですが、中高時代は学校までの通学時間が長かったため、勉強時間の確保には苦労しました。
特に高校時代は学校まで片道2時間かかり、朝礼ギリギリに登校して、授業が終わるとすぐに下校する日々。一日の多くを電車内で過ごしていたので、邪魔にならないようにノートを広げて数学の問題を解いたり、自分で作った暗記ノートを見直したりしていました。
休日にまとまった勉強時間をとり、テスト前は14時間以上勉強したことも。あまり要領が良いタイプではないので、自分が納得できるまで勉強していたら、結果的に長くなってしまうんです。
苦手科目は数学で、よく先生のところへ質問に行きました。でも、ただ質問するだけではあまり身になりません。まずは自分で解いてみて、わからないところが明確になった段階で聞くようにしていました。まったく手が付けられそうにないときは、最初のヒントだけ教えてもらったこともあります。
受験期間で一番つらかったのは、模擬試験やテストの成績が思ったほど伸びなかったときです。努力が結果に結びつかないのは、精神的にきついもの。そんなときは、母に話を聞いてもらったり、各教科の先生方にアドバイスをいただいたりしました。
今、受験勉強に励まれている皆さんも、思うように成績が伸びなくて落ち込むことがあると思います。でも努力自体は決して無駄ではなく、方法や方向性が少しずれているだけかもしれません。まわりにアドバイスを求めながら、定期的に勉強との向き合い方を振り返ることが大切だと思います。
━━東北大学教育学部のAOⅢ期はどのような試験だったのでしょうか。
私が受験したときは、共通テストの成績と小論文、面接の成績を総合して結果が出ました。高校時代の成績や実績、資格についても評価されています。アピールしたのは、教育やジェンダー問題に関心があること、模擬国連や国際ソロプチミスト・ユース・フォーラムに参加した経験、また高校時代に取り組んだ課題研究などです。
面接では、私がジェンダーに興味があるということもあり、当時世間をにぎわせていた著名人の女性蔑視発言について意見を聞かれました。皆さんも日頃から、時事問題について自分の考えをまとめておくと良いかもしれません。入学後のイメージを膨らませるために、学部のホームページなどを見て、どのような研究をされている先生方がいらっしゃるのか調べておくのも大切です。
国際的な視点が磨ける環境が整っている。
━━東北大学、また教育学部に入って良かったと感じる点を教えてください。

一番は、国際交流の機会が多いところです。私は1年生のときから自由選択科目の「国際共修授業」という講義を取っていました。これは、日本人学生と留学生が一緒に受講できるもので、日本語の授業と英語の授業があります。講義内容もユニークで、仙台の夏祭りで踊る「すずめ踊り」にチャレンジしたり、留学生と一緒に漫才をつくったりしました。
他にも、国際交流系のサークルに所属して、留学生の学校生活を支援する活動も有意義でした。
また、東北大学は2023年に文部科学省から「国際卓越研究大学」の認定候補に選ばれました。今後正式に認定されれば、より研究環境が充実したものになり、国際的な視点がさらに磨ける環境が整うと思います。(2024年3月末時点の情報)
学内はもちろん、教育学部自体も国際的な学びが充実しています。私が特に興味を持っているのは、「国際教育開発」の分野です。教育不平等や社会的弱者の教育課題について研究を深めることができ、まさに入学前から学びたかった分野に取り組めています。また、教育学部で開催される国際会議の運営に携わり、有名な研究者の方々とお話をさせていただく機会が多い点も大きな魅力だと感じています。今後は大学院進学を考えているため、海外の大学と連携した研修プログラムなどにも積極的にチャレンジしていきたいです。
海外に出て学ぶことで新たな発見が得られた。
━━半年間、交換留学でスウェーデンに行かれたそうですね。現地ではどのような経験ができましたか?

私が留学したのは、スウェーデンのウプサラ大学です。北欧は教育の質が高く、ジェンダー平等実現に向けた取り組みも世界的に高く評価されているので、留学先としてスウェーデンを選びました。
6カ月間の留学期間中には、ジェンダー問題や、持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)、スウェーデンの教育改革戦略などの講義を受講。週に3~4日は講義を受け、その他の時間は関連する論文や資料を読んだり、レポートを書いたりする時間に充てていました。休みの日には近隣諸国に足を延ばして、現地でしか出会えない景色や文化、食を楽しめたのも良い思い出です。
留学中に大変だったのは、英語で20ページ以上の論文を書いたことです。本格的な英語論文は初めてだったので、苦労しました。同じクラスには、すでに社会に出てさまざまな経験を積んでいる30代、40代の方が多く、自分は一番年下。経験値も知識もまだまだ足りないと気付けたことは、とても貴重な経験でした。
意外だったのは、世界的に高く評価されているスウェーデンの教育も、国内から見ればさまざまな課題が指摘されていたことです。また、スウェーデンは男性の育休取得率が高く、公園でベビーカーを押している男性を当たり前のように見かけますが、実は職種や職場の雰囲気などによって育休が取りづらい場合もあると、現地で知りました。取り組みが進んでいるスウェーデンでも、日本と似たような課題があることに驚きました。
勉強以外のところだと、「オールジェンダートイレ」というジェンダーレスで使えるトイレが多いのが印象的でした。なぜ、スウェーデンではこのような取り組みが進んでいるのか、日本との違いはどういうところにあるのか。とても興味がわいたので、学士論文のテーマとして扱う予定です。
━━留学までの準備はどのように進めましたか?
私の場合、教職科目も履修していたので、留学する前にいろいろと準備することがありました。英語の教員免許取得を目指しているので、教育学部の講義だけでなく文学部の講義も受ける必要があり、履修科目が多くなります。留学で講義が受けられない期間があっても留年しないよう、1年目から履修の組み方には気を付けました。
また、留学前には、大学入学前から所属を希望していた研究室の先生にアポイントをとって帰国後の相談をしておくなど、早めの準備を意識していました。 大学の留学生課や教育学部の教務係の方、留学経験のある先輩方などにたくさん相談に乗っていただき、そのおかげで無事に留学できたと思っています。
今度は私が国際交流のすばらしさを伝える人になりたい。
━━教員免許を取得しようと思ったのはなぜですか?

正直、入学当初は教員免許を取得するかどうか悩んでいました。ですが、将来は世界の教育やジェンダーに関わる仕事に就きたいと思っていたので、教職課程で学ぶことは自分にとって必ずプラスになると思ったのです。 振り返ると、私はこれまでたくさんの先生方に助けていただきました。中学校や高校の英語科の先生、そして今は研究室の先生などに出会えたおかげで、英語の面白さや国際交流のすばらしさに気付くことができたのです。将来は、自分もそれらを伝えられる存在になりたいというのが、昔からの夢でした。たとえ教職に就かなくても、実際に教育現場の状況を学ぶことは意味のある経験だと思っています。今は、母校に教育実習で帰ることが楽しみのひとつです。
チャンスをつかむ意思があれば充実した学生生活が待っている。
━━地元を離れて仙台での暮らしに不安はありませんでしたか?
最初は心細かったですが、学内にさまざまなサポートがあり助かりました。
例えば、「ピアサポーター制度」といって、先輩や同期と数名のグループになり、履修の組み方や学内での過ごし方などを教えてもらえる制度があります。新生活の不安や疑問点は、ピアサポーターの先輩に質問できたので、安心できました。
他にも、新生活の準備をお手伝いする「新生活サポートセンター」という組織もあります。入学前のお部屋さがしや各手続きなどのサポートが受けられるものです。
これから入学される皆さんは、こうしたサポートをぜひ利用してみてください。サポート体制がしっかりしているからこそ、学業に専念できると思います。先輩や同期とのつながりも増えるので、一石二鳥ですよ。
そして何よりお伝えしたいのは、国際的な教育問題などに興味のある方にとって、東北大学教育学部はすばらしい進学先だということです。たくさんのチャンスが用意されているので、自ら手を伸ばせば成長のきっかけをつかむことができます。充実した学生生活がきっと待っていますよ。
■鳥澤さんのある一日
6:30 起床
朝食をとり、昼食のお弁当を作ります
8:30 登校
2限開始までは研究室で自習をします
10:30 2限目「発達心理学演習Ⅱ」を受講
12:00 昼休み
持参したお弁当でランチタイム
13:00 3限目「比較教育学講義」
教員免許取得を目指しているので他の学部生より講義数が多く一日だいたい2~4コマあります
14:30 講義の空き時間は研究室で課題をすることが多いです
1~2年生のうちは図書館をよく利用していました
19:00 帰宅後、オンライン家庭教師のアルバイト
21:30 就寝
睡眠時間はしっかりとりたいので早めに就寝します

SDGs時代の教育
—すべての人に質の高い学びの機会を
著者:北村友人 佐藤真久 佐藤学 編著
出版社:学文社
発行:2019年4月25日
おすすめコメント: SDGs(持続可能な開発目標)を実現するためには、人間にとって根源的な営みである教育を通じた人材育成や知の創出が欠かせません。この本は、SDGsと教育の関連について幅広い視点から論じており、持続可能な世界の実現に向けて、今私たちが学ぶべき内容の詰まった教科書のような1冊です。

Profile
鳥澤 侑生TORISAWA Ui
静岡県立韮山高等学校出身。 幼少期に読んだ一冊の本をきっかけに、世界の教育問題やジェンダーに興味を持つ。中高時代には、オーストラリアやイギリスへ語学研修に行き、模擬国連にも参加。諸経験を生かして東北大学教育学部をAOⅢ期で受験し合格。教員免許の取得を目指す教職課程を履修するかたわら、スウェーデンに半年間の交換留学に行くなど積極的に知見を深めている。