ミネルヴァ・ノート

教育学研究科・教育学部インタビュー

TOHOKU UNIVERSITY

08

講義を受ける度に教育学への
新たなアプローチに出会える。
充実した学習環境で
文理融合の学びを楽しもう。

KUROYANAGI Nao

東北大学教育学部 教育心理学コース

KUROYANAGI Nao

畔柳 直旺

2024.3.29

人間に関わることは教育から調べることができる。

━━東北大学教育学部を志望した理由を教えてください。

一番の決め手は、オープンキャンパスの学部説明会で、教育学部の先生がおっしゃっていた「人間の一生に関わる研究なら、そのほとんどが教育学から紐解ける」という説明でした。
高校時代に、「なぜ人によって得意なことと不得意なことが違うのだろう」と感じた経験があり、「人間とは」を探究できるような進路先を探していたのです。その経験とは、高校が地元の小学生向けに開催した科学実験教室の手伝いです。子供たちの実験をサポートしているうちに、同じ学校で同じ教育を受けていても、人によって得意なことや苦手なことに差が出てくることに興味を持ちました。また、一人ひとりの個性に合わせた教育が必要なんじゃないかと感じ、「人間」「教育」というキーワードが、進路を考える上で浮かんできたのです。
そんなときに、東北大学のオープンキャンパスで「教育学」という学問を知り、自分の興味関心に合う学びができるのではないかと思い志望しました。

教育学には数え切れないほどの研究視点がある。

━━教育学部の好きなところはどこですか?

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一番面白いと感じているのは、さまざまな視点から「人」について研究できるところです。一口に教育学といっても、「教育哲学」「臨床心理学」「ロボティクス」「脳科学」など、数え切れないほどの角度から研究している先生方がいらっしゃいます。講義を受ける度に、自分が知らなかった新しいアプローチと出会うことができ、教育学の奥深さ、人間探究の面白さを教えていただいています。
また、他学部に比べて少人数なのも教育学部の特徴です。他学部は一学年に200名、300名といる学部が多く、工学部にいたっては一学年に800名以上の学部生がいますが、教育学部生は約70名です。自然と交流頻度が増えるので、仲良くなりやすく、お互いの興味のある分野について情報交換ができます。 少人数ではありますが、講義によっては他学年の学生と一緒になることもあり、グループワークを通じて刺激を受けることも多いです。

「人」に焦点を当てた心理学の探究なら教育学部がおすすめ。

━━今、畔柳さんが特に興味を持っているのはどのような分野ですか?

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私は、今「教育心理学コース」に所属しています。1年次の後期に、各先生方が研究内容を紹介してくださる講義があり、それをもとに教育学コースと教育心理学コースの中から選びました。
理由は、「人」について知りたいなら、一番深く関連している領域は心理学ではないかと思ったからです。
実際に、心理学のコースに進むと「臨床心理学」「発達心理学」「教授学習心理学」など、把握しきれないほどの種類があることに驚きました。
例えば発達心理学では、人間は一生を通じてどのような段階を経て変わっていくのかを調べます。さらに発達心理学の一分野には、世代によって変わる悩みの特徴などを細かく見ていく「青年心理学」というものもあります。こうした多様な研究視点があることを知り、徐々に学びを深めているところです。

 

今、特に関心があるのは、数学や技術的な手法を使って、人の心を可視化するような研究です。意外かもしれませんが、教育学の研究には統計学などの数理的な手法を用いることが少なくありません。私は1年次に全学共通の教養科目で「数理統計学」という講義を受け、その面白さに興味を持ったので、個人的に勉強を続けて「統計検定」準1級を取得しました。また、データ分析を行う機械学習にも興味があり、現在エンジニア向けの「E資格」にもチャレンジしています。東北大学には、E資格取得のための学修支援プログラムがあるので、費用面でのハードルが下がり助かっています(指定の科目を履修し単位を取得している学生、または取得予定の学生に限るなどの条件あり)。
こうした数理学的な手法も取り入れながら、人それぞれ違う個性や能力を可視化できるような研究につなげていきたいです。

━━教育学部で学べる心理学は、文学部の心理学とはどのような違いがありますか?

以前、文学部の心理学の講義を他学部受講したことがあります。文学部では、実験心理学や社会心理学などの基礎的な問題を扱っていました。具体的には、ストレス、化粧、顔、香りに関する心理学や、地域社会における資源交換(物や情報などを交換することで他者や集団との関係性を形成する)などのトピックに触れました。
一方、教育学部では、教育心理学、発達心理学、青年心理学、学習心理学などが学べます。人の発達や学習に関する探究、そして人への心理学的支援を目指している領域です。
両学部で学べる心理学の違いは、扱っている分野や研究目的が異なっている点ではないかと感じました。

伸び悩んだときこそコツコツ続けることが大切。

━━高校時代、受験勉強にはどのように取り組んでいたのか教えてください。

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最終的には、AOⅡ期の選考を受けて入学しましたが、高校時代は常に一般入試を念頭に置いて勉強していました。選考に漏れたら二次募集で受験しようと考えていましたし、たとえ合格できたとしても、一般で入学できるくらいの知識を身に付けておいた方が良いと思ったからです。
これはあくまで私に合ったやり方ですが、「量」をこなすことに重点を置いて勉強してきました。マイルールは、平日は3時間、休日は8時間の自習時間をつくること。とはいえ、弓道の部活から帰った後に机に向かう気力はないので、朝時間を中心に、なるべく家以外の場所で勉強していました。
毎朝7時に登校し、校内で1~2時間の自習。夜は部活後に塾の自習室にこもって自習時間をつくるといった感じです。一度休息をとってしまうと、そのままダラダラしてしまう気がして、とにかくすぐに体を動かして自習できる環境に身を置くようにしていました。
今、受験に取り組んでいる皆さんの中には、部活動との両立に苦労している方もいるかもしれません。私がアドバイスできることがあるとすれば、隙間時間を大切にして、自分に合った一日のサイクルを決めることです。人によって、早朝に時間をとった方が良いのか、午後にまとまった時間をつくるスタイルが合っているのかは違います。どの時間なら勉強に集中できるのか、いろいろ試してみるのがおすすめです。あとは、怠けたくなる気持ちとの闘いではないでしょうか。

━━苦手な科目、成績が伸び悩んだ科目はありましたか?

どんなに時間を割いても、国語の模擬試験の結果はなかなか安定しませんでした。高校3年になっても伸び悩み、志望校の見直しが頭をよぎったほどです。ですが、当時の教科担当の先生から、文章問題には「出題者の意図」があることを教えていただき、問題文のどこに意図が隠れているかを意識して、関連する箇所になみ線を引いて解くようになってからは、徐々に点数が安定してきました。個別に問題添削をしていただくなど、励ましてくださった先生方の存在は、心の支えにもなりました。

 

これはお世話になった高校の先生の受け売りですが、「学習曲線」というグラフがあり、どんなに努力しても伸び悩む時期は誰にでもあるという研究結果が出ているそうです。この話を知ってからは、思うように成績が伸びない時期も、必要以上に落ち込むことがなくなりました。大切なのは、諦めずに努力を積み重ねていくこと。そうすれば、再び成長を感じる時期がやってきます。

教育学部で学びたいという気持ちを具体的に説明することが大事。

━━畔柳さんが受験したAOⅡ期の内容について教えてください。

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AOⅡ期は共通テストを課さない選考方法で、学習成績概評がA段階(評定平均4.3以上)に属しているなど、いくつかの出願条件があります。出願を目標にしてからは、それまで以上に評定を意識して定期テストに取り組みました。
具体的な対策を始めたのは、高校2年生の秋です。先生から「志願理由書は何度も書き直すことを考えれば、今始めないと間に合わない。3年生の間は筆記試験対策に集中するためにも、できることは早めに始めた方が良い」と、アドバイスをいただいたからです。自分の場合、一般入試も視野に入れていたので、両立のためにも早めの対策を意識しました。

AOⅡ期の筆記科目だった英語と小論文対策を本格的に始めたのは、3年生になってからです。特に小論文は苦手意識があったので、他の教科より自習時間を多めにとり、「自分の考えをわかりやすく伝える」書き方を意識して、毎日書くことを大切にしました。
そして試験当日、小論文の問題を見ると実質国語の試験のような内容だったので少し動揺しましたが、国語とはたくさん向き合ってきたので「あとはなるようになる!」と、落ち着いて問題を解くことができました。最後まで、一般入試を視野に入れて勉強してきて良かったと思った瞬間です。
教育学部のAOⅡ期は、令和3年度入学者向けから始まったばかりで、過去問の数が限られていますが、国語や英語の基礎的な力、論理的思考力が求められているように思います。
 
志願理由書や面接では、なぜ東北大学教育学部で学びたいのかを、過去の経験も交えてアピールしました。また、入学したらどのような学びを深めたいか、なるべく具体的に伝えられるよう準備しました。私が伝えたのは、学校教育において生徒一人ひとりに合った教育をするにはどうすれば良いのか探究したいという想いです。当時は、「GIGAスクール構想」(全国の児童生徒に一台のパソコン端末と、高速ネットワークを整備する構想。2019年に閣議決定)の政策が動き出した頃。タブレットやAIをうまく活用することで、先生の負担を軽減し、一人ひとりの生徒に合った形の教育にシフトしていくための研究に興味を持っていました。今、実際にそのための学びを深められている実感があります。

文理問わず人を探究する面白さに出会える場所。

━━東北大学、また教育学部に進学して良かったと感じるのはどんな時ですか?

東北大学は全ての学部生が1年次に全学共通の教養科目を履修するため、さまざまな学問に触れられるのが魅力的だと思います。新たに興味がわく分野に出会える可能性が高く、視野を広げたい人におすすめの大学です。
学内には留学生が多く、国際交流の機会が多いのも特徴です。私が所属している居合道サークルには、スウェーデンや中国などさまざまな国から来た留学生がいます。袴を着て模擬刀を使った演武をする居合道は、侍のイメージに近いらしく、留学生から人気のあるサークルです。日本の伝統に触れながら、国際交流できる良い機会になっています。
一言で表すなら、とても充実した学生生活を送ることができています。東北大学へ進学を考えている皆さんにも、きっと楽しい日々が待っていると思います。特に、「人」に興味を持っている人には、幅広い研究視点に出会える教育学部がおすすめです。文系的な視座も、理系的な視座も、人を探究する上で十分生かせるものなので、文理問わず進路先のひとつとして選んでいただけると嬉しいです。

■畔柳さんのある一日

6:00 起床 
    身支度を整えて余裕を持って早めに登校します
8 : 50 1限目「心理検査法」 
10:30 2限目「統計的学習論講義」
12:00 昼休み
     学食で友達と雑談をしながら昼食
13:00 3限目「教育情報デザイン論講義Ⅱ」 
14 : 30 授業終わりに図書館に寄り、資格試験の勉強や大学の課題に取り組みます
     その後アルバイトへ向かいます
18:30 地元の塾講師のアルバイト
22:00 帰宅後はなるべく休息時間に充てています
24:00 就寝

人間科学のための統計分析

著者:石井 秀宗
出版社:医歯薬出版
発行:2014年9月25日

おすすめコメント: おすすめコメント: 人の能力を調べる際に活用できる数理的な手法を、具体例と共に学べる一冊です。統計分析を論理的に理解できます。基本的には、高校までの数学で理解できる内容なので、人について数理的な表現をしたい人はぜひ読んでみてください。

Profile

畔柳 直旺KUROYANAGI Nao

文部科学省指定のスーパーサイエンスハイスクール、宮城県仙台第三高等学校出身。在学中に、探究活動として「照明の色が人間のパフォーマンスに及ぼす影響」についてグループワークに取り組む。学校主催の小学生向け科学実験教室のサポート活動を通して、生徒それぞれ特性が異なることに気付き、教育学に興味を持つ。AOⅡ期の選考を受けて2022年、東北大学教育学部に入学し現在に至る。