ミネルヴァ・ノート

教育学研究科・教育学部インタビュー

TOHOKU UNIVERSITY

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教育を多角的に
“研究”することが目的の
教育学部での学びを生かし、
多様な境遇にある生徒を
見守れる先生になりたい。

CHIDA Miyu

東北大学教育学部 教育学コース

CHIDA Miyu

千田 美結

2025.3.25

先生になる夢をもう少し広い視野で考えたかった。

━━東北大学教育学部に入学した理由を教えてください。

写真1
子どもの頃から学校生活や勉強が好きで、将来は学校の先生になりたいと思っていました。ですが、高校生になって将来をじっくり考えはじめ、単に先生になることが目標ではない気がしてきたのです。そこで、もう少し広い視野で進路を考えるようになりました。
東北大学教育学部のオープンキャンパスに参加した時、この学部が教員養成を主とする場ではなく、教育そのものを多角的に研究するところだと知りました。先生方の熱意あふれる姿勢にも心動かされたのを覚えています。
また、当時の学部パンフレットの「研究対象は75億人分の生き方だ」というキャッチコピーも印象的でした。教育だけでなく、人間の生き方全体を研究するという考え方に触れ、これが私の学びたかった学問だと感じました。

すべての学びが教育学につながる。

━━実際に東北大学教育学部で過ごした4年間を振り返って、入学して良かったと感じる点はどこでしょうか。

写真2

私にとっての東北大学の最大の魅力は、多様な学びの機会と、さまざまな背景を持つ人々が集まっていることだと思います。教育学部の中だけでも、多岐にわたる研究室があり、進路の選択肢も幅広いです。
「教育」と聞くと、学校での学びを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、東北大学教育学部では、人が生まれてから亡くなるまでのすべての過程を「教育」と捉えています。そのため、行政や心の問題、さらには人工知能など、あらゆる分野から探究する研究室が存在します。
また、総合大学ならではの「全学教育」も魅力の一つです。学部1・2年次には、他学部の学生とともに多様な分野の講義を受講できます。私自身、文学や社会学、心理学といった文系科目から、生物や地学といった理系科目まで、広範な授業を履修しました。すべてが直接教育学に結びつくわけではありませんが、「教育」を研究する立場としては、すべての学びが何らかの意味を持つと感じています。

困難を抱える子どもたちが安心できる場所をつくりたい。

━━千田さんが大学で取り組んだ研究テーマを教えてください。

写真3

私が主に取り組んできたのは、困難を抱える子どもたちの教育機会を保障し、安心して学べる居場所をつくるための研究です。このテーマには、大学入学以前から興味を持っていました。
中学時代に、不登校の友人や家庭の事情で志望校に進めない子がいるのを見て、なぜだろうと疑問と違和感を覚えました。そこで、自分なりに調べるうちに、これらは個人の問題ではなく、社会全体の課題として捉えることもできると気づいたのです。
「学校以外に安心して過ごせる場所が必要なのではないか」「国の支援制度はないのだろうか」こうした関心を、大学ではより専門的に学びたいと思っていました。
そこで、入学後は教育について学ぶのと並行して、NPO法人が運営する「学習支援教室」でのアルバイトにも取り組みました。学習支援教室とは、経済的に厳しい家庭の中高生を対象に無料の学習会などを運営するものです。私は勉強を教えたり、悩みを聞いたりしながら、子どもたちのニーズを探る役割を担いました。支援の現場を間近で見ることで、関心はさらに深まっていきました。
3年次の研究室配属では「教育政策科学」の研究室に所属され、学校とは別の学びの場や教育と福祉の連携などについて、より専門的な研究に取り組みました。卒業論文のテーマは、実体験をもとにした「学習支援教室に関わる学生ボランティアの意識に関する研究」です。研究方法は、学習支援教室の運営を支える学生ボランティアや職員の方々にインタビューを行い、その内容を分析するというものです。インタビューの仕方一つで相手の答えが変わる難しさを実感しながらも、ゼミの先生の指導のもと試行錯誤を重ね、研究を深めていきました。
関心のある分野について知るだけなら書籍などを通じても可能ですが、自ら調査し、分析し、研究としてまとめる経験ができたのは、東北大学教育学部だったからこそだと思います。

学びも部活動も遊びも充実。東北大学の学生生活。

━━仙台市は学生にとって過ごしやすい地域ですか。

私は仙台で生まれ育ったので、地元の住みやすさをあまり実感する機会がありませんでしたが、県外から来た友人の多くは「仙台は暮らしやすい」と口を揃えて言います。都会の便利さと、自然の豊かさが程よく調和している点が気に入られているようです。
私自身も、気分転換に日帰りで秋保温泉に行くことがあります。仙台駅から電車で1時間以内に行けるリフレッシュスポットです。
また、教育学部がある川内キャンパスは、最寄り駅がすぐ近くにありアクセスも良好で、地下鉄で仙台駅まであっという間に行ける立地です。大学の構内に地下鉄の出入り口があるんですよ!講義の合間に時間が空けば、友だちと仙台駅まで出て、気になっていたカフェに行くこともあります。

━━勉学以外での、大学生活一番の思い出は何ですか。

写真5

ソフトテニス部の活動が一番思い出に残っています。活動頻度が高く、週に5日は練習や試合があり、多くの時間を部活動の仲間とともに過ごしてきました。大会にも積極的に参加し、旧帝国大学対抗の全国七大学総合体育大会に出場できたことも良い思い出です。 学部も出身も違うたくさんの仲間と一緒に努力した経験は、勉学とはまた違った学びを得られる機会になりました。

苦手科目の克服は余裕を持って高校2年生のうちに。

━━千田さんの中学生・高校生時代の勉強方法について教えてください。

写真6

私は中学校・高校時代、ソフトテニス部に打ち込んでいました。大好きなテニスに集中するためには、勉強にも自信を持てるようになりたかったので勉強も頑張りました。
といっても普段の勉強方法はいたって普通で、学校の課題に取り組み、授業でわからないことがあれば早めに復習して解消するというものです。
そしてテスト前の部活動休止期間に入ったら、一気に勉強モードに切り替えます。学校の10分間の休憩時間や昼休みといった隙間時間を大切にし、1ページだけでも参考書を進めるようにしていました。また、休日になると1日12時間は勉強に費やしていたかもしれません。
定期テストに向けた勉強方法は、まずスケジュールを考えることから始めます。自分の得意・不得意を把握したうえで、各科目を理解するのにどれくらい時間をかけるべきか逆算して計画を立てるようにしていました。
特に苦手だったのは数学です。高校1年生の時の成績は、60点台くらいでした。ですが2年生になって、このままではまずいと本腰を入れて取り組むように。先生や友人に助けてもらいながら、ノーミスで解けるようになるまで何度も何度も同じ問題をノートに書き続けました。そうしていくうちに、答えまで暗記してしまったのですが、不思議と少しずつ数式の構造が理解できるようになっていったのです。結果、2年生の終わり頃には90点台を取れるようになりました。
振り返ると、2年生のうちに時間をかけて苦手科目を克服しておいて良かったと思います。3年生になると、自分がつまずいている箇所を探したり、さかのぼって勉強し直したりする時間はなかなか取れません。後輩の皆さんには、苦手科目には早めに向き合ってみることをおすすめします。

━━受験勉強に向けてはどのように取り組まれましたか。

私の第一志望は東北大学教育学部だったので、その受験に向けて準備を進めました。具体的には、高校2年生の冬から一般試験の勉強を始め、3年生になってからは年内に合否が出るAOⅡ期試験の対策も始めました。
AOⅡ期の試験内容は、1次は英語の長文読解と小論文による筆記試験で、合格後に面接試験が行われます。教育学部のAOⅡ期は私の年から導入されたため、過去問が存在しませんでした。そこで、他学部のAOⅡ期の過去問をたくさん解いたり、新聞の社説欄を要約したり、また教育に関する新書や論文を読んだりして試験に備えました。 AOⅡ期で受験することは、もしも不合格だった場合に一般試験の準備が間に合わないリスクがあると言われることもありますが、個人的には、AOⅡ期対策でたくさんの文章を読んで自分の考えをまとめたり、英文読解に取り組んだりしたことは、結果的に一般試験にも役立つものだったと思います。

教育実習で気づいた、私が先生になりたい本当の理由。

━━千田さんの卒業後の進路を教えてください。

写真4

卒業後は、宮城県内の中学校・高校の教員として働きます。大学進学前には「自分は本当に先生になりたいのか」と悩んでいましたが、せっかく大学に入ったからにはあらゆる角度から教育について学びたいと、教職課程を履修しました。
一時は民間企業に就職しようと考え、実際に3年次には出版会社から内定をいただくことができました。ですが、部活動やアルバイト経験を通して、自分は人と関わったり誰かを支援したりする仕事が向いているのではないかと、教員採用試験に気持ちが傾いてきたのです。そして4年次の春に母校へ教育実習に行ったことで、教員一本で行こうと決めました。
教育実習では、私が在学していた頃とは異なり、ICTが活用され、授業の進め方が進化していることに驚きました。生徒同士のディスカッションの時間が増え、一方的な教える・教えられる形ではなく、共に学ぶ空間が広がっていたのです。
また、大学で困難を抱える子どもたちへの支援について学んだ経験から、「この子も何かしらの問題を抱えているかもしれない」と、表面的には捉えられない視点を持てたことが、学校の先生として生かせるかもしれないと希望が持てました。
そして何より、国語の授業を担当した際、生徒たちが理解し喜ぶ表情を見た瞬間に、大きな喜びを感じました。私は、人が成長する過程に携わることが好きなんだと、はっきりわかったのです。
そこからは猛勉強して、他大学の教員志望の友人と一緒に勉強するなどして対策を行い、無事に教員採用試験に合格できました。今春(2025年の春)には、小さい頃からの夢だった「学校の先生」として社会人生活をスタートさせます。
東北大学教育学部は、人間の誕生から一生涯にわたるすべての教育を研究する学部であって、教員養成を主とする学部ではありませんが、だからこそ「教育とは何か」を多岐にわたって、深く探究できた経験は、決して無駄ではなかったと思っています。
これからも、東北大学で学んだ「研究第一」の理念を胸に、自ら学び続ける気持ちを持ちながら、幅広い視野で子どもたちを見守ることのできる先生になっていきたいと思います。

■千田さんのある一日

7:00 起床
8:00 登校
    早めに大学に着いたら図書館や休憩スペースなどで自習をします
8:50 1限「臨床心理学講義Ⅱ」
    私の所属は教育学コースですが、教育心理学コースの基本的な講義も受けます
10:30 2限「スポーツ文化論講義Ⅰ」
12:00 昼休み
    学食で友人と昼食
13:00 3限「教育政策科学演習Ⅵ」
    私が研究している教育政策科学に関してより専門的に学びます
14:40 4限「漢文講読」
    教職課程の講義です
    私は国語の教員免許を目指していたため文学部の講義を履修していました
16:00 ソフトテニス部の活動
    部活がない日は学習支援教室や塾講師などのアルバイトに行きます
19:00 部活終わりに友人と一緒に夕食
21:00 帰宅後、講義の課題に取り組む
24:00 就寝

ドキュメント高校中退

-いま、貧困がうまれる場所

著者:青砥 恭
出版社:筑摩書房
発行:2009年10月

貧困は単なる経済格差だけではなく、子どもの意欲や希望の格差まで生み出すものであり、学習機会の保障と環境整備は社会全体の課題であるという視点が学べる本。AOⅡ期で合格した後、レポート課題のための推薦図書として示された一冊で、比較的読みやすい。

Profile

千田 美結CHIDA Miyu

宮城県立宮城第一高校出身。幼い頃から抱いていた「先生になりたい」という夢を高校時代に改めて考え直し、教育について専門的に学べる東北大学教育学部に進学。在学中は、ソフトテニス部での活動やアルバイトに積極的に取り組みながら、教職課程も履修する。教育学で身につけた幅広い知識と研究視点を生かし、卒業後は宮城県内の中学校・高等学校で教鞭をとる。