
自分の経験と特性を生かして
AOⅡ期受験。
世界的評価の高い東北大学で、
心や教育の問題を
学術的に研究していきたい。
OGAWA Hinata
東北大学教育学部教育学科1年
OGAWA Hinata
小川 ひなた
2025.3.25
生きづらさの理由を学術的に根拠のある方法で研究したかった。
━━小川さんが東北大学教育学部を受験しようと思ったきっかけを教えてください。

まず、教育学や心理学に強い関心があったことが大きな理由です。私は昔から何に対しても手を抜くことが苦手で、自分の理想や周囲からの期待のために努力しすぎてしまうところがあります。高校1年生の頃には英語のディベート大会や暗唱コンテスト、部活動の大会などに挑戦し、一定の成果を上げることができましたが、その後燃え尽きたように学校に通うことが難しくなりました。「なぜこんな状態になったのか」と自分自身を見つめ直す中で、ネットや本を通じて性格診断ツールを試したり、家族関係や子どもの発達に関する問題について調べたりしました。そうするうちに、より学術的な根拠に基づいた方法を学びたいと思い、教育学や心理学への興味が深まりました。
もう一つの理由は、高校2年生の夏から1年間経験したカナダ留学です。学校に通えなくなったことや、元々違和感があった学校教育への関心から、海外の教育について知りたくなり留学を決意しました。実際にカナダで学んでみると、現地の教育システムは、自分で学びたい分野を選択して時間割を組む仕組みになっており、とても新鮮に感じました。特に、私は音楽が好きだったので音楽パフォーマンスの授業を履修し、学ぶことの楽しさを実感しました。学力面では、日本の高校の方がレベルが高いと感じましたが、自ら選択することで学びの意欲を高めるという点に魅力を感じ、教育に対する関心がさらに強まりました。
加えて、留学中親しくしていた友人に発達障害のある子がいたことも、進路選択の理由の一つです。ハンデを抱える生徒への学校側のアプローチや、インクルーシブ教育のあり方に感銘を受け、ますます教育学を学べる大学への進学を考えるようになりました。
高校3年生の夏に帰国した時点で、受験に向けた勉強はほとんどできていませんでした。しかし、国語と英語は得意で、教育学や心理学を学びたいという明確な目標があったため、自分の強みを生かせる大学を探していたところ、東北大学教育学部のAOⅡ期試験を知りました。さらに、「Times Higher Education(THE:タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)」が発表するTHE日本大学ランキングで、東北大学が4年連続1位に選ばれていることを知り(2023年4月時点)、国際的にも評価の高い東北大学を迷わず第一志望に決めました。
自分の「学びたい」という意欲のために学べる環境。
━━東北大学教育学部に入って良かったと感じるのはどんな時ですか。

東北大学教育学部に入学してもっとも良かったと感じるのは、素晴らしい仲間に恵まれたことです。学部の規模が小さいため、すぐに友人ができ親しくなれます。例えば同じ文系学部であっても、文学部の入学定員は210名なのに対し、教育学部は70名です。一人ひとりと関わる機会が多く、自分の意見をしっかり持っている人ばかりなので話していてとても楽しいです。
講義では、1年次に学部の枠を超えた学びができるため視野が広がりました。例えば、「哲学」の学問に触れた際には、『ことばと人間』をテーマに分野横断型の学びを経験し、「高校時代にこのような授業があれば、もっと自分の視野を広げて充実した学生生活を送れたかもしれない」と思いました。
また、「学問論演習」という講義も印象的でした。1年次には全員が「学問論」を履修し、学問全体に対する姿勢やアカデミックライティングのスキルなどを学びますが、「学問論演習」はその実践的な講義です。私は「マンガ読解の認知科学」という講義を履修し、数名のグループで「漫画における年代別の目の変化」について研究しました。目の形や顔面積に対する比率を年代ごとに分析し、相関関係を導き出すという内容で、漫画好きの私にとって、好きなことと研究が結びつくとても楽しい講義でした。今、自分の「学びたい」という意欲を存分に満たせる環境に身を置けていることに、大きな喜びを感じています。
学校生活以外では、寮生活も充実しています。私は今、留学生と共に暮らす「ユニバーシティ・ハウス」という国際混住寮に住んでいます。私のユニットでは現在、中国や台湾、ベネズエラなどから来た留学生を含めた8名で共同生活を送っています。留学生の中には社会人経験を経て修士や博士課程で日本に来ている方も多く、幅広い年代の人々と交流できる点も魅力です。
非行に走る発達障害のある子どもについて研究したい。
━━これから特に学びたいのはどんな分野ですか。

私が現在関心を持っているのは、発達障害と少年非行に関する研究です。以前、小児看護の分野で働かれている先生の講義を受講した際に、発達障害のある子どもが二次障害として非行に走る可能性があり、その課題の難しさについてお話を伺いました。私は難しい課題にこそ挑戦したくなる性格なので、このテーマに強く惹かれました。発達障害のある子どもは、周囲に理解されずに苦しんでいることも多く、ご家族の負担も大きいはずです。そんな中で、非行に走る本人やその家族を社会的にサポートするにはどうすれば良いのか、心の専門家としてできることは何か。今後、この分野の研究に取り組んでいきたいと考えています。
━━2年次以降の小川さんの学習計画について教えてください。
2年次の夏から1年間、オランダの大学で心理学を学ぶ予定です。東北大学に入学した当初から留学を考えていたため、「留学アドバイジング」の窓口を何度も訪れ、計画を立ててきました。先生に相談する中でオランダを勧めていただき、筆記試験を受けて留学が決まりました。オランダは、ユニセフが2013年に行った調査で「世界一子どもが幸せな国」と評価されたこともあり、以前から興味を持っていた国です。現地でしか得られない知識や体験を、積極的に吸収していきたいと思います。
東北大学には学術交流協定を結ぶ海外の大学が豊富にあり、留学に関する情報提供やイベントも充実しています。しかし、自分から積極的に情報を取りに行かなければ、気づいた時には募集が締め切られていることもあるので、早めの情報収集と行動を意識することが大切です。
利便性が良く自然も豊かで住みやすい。
━━仙台の住みやすさについてはいかがでしょうか。

仙台は基本的に何でもそろっていて、普段の生活で困ることは特にありません。仙台駅前はとても栄えていてショッピングが楽しめますし、少し移動すれば自然も多いので、バランスが取れた街だと感じます。
関西暮らしが長かった私にとって、冬場の雪はとても新鮮です。雪道を登下校する際には注意が必要ですが、思っていたほど市内は降り積もらない印象です。私のまわりには、仙台だけでなく新潟や秋田など、雪深い地域出身の友人が多いので、雪に備えたアドバイスが聞けて心強く思います。
まわりを気にせず自分に合った勉強スタイルを知ることが大切。
━━中学生・高校生時代はどのような勉強をしていましたか。
中学生の頃は数学と英語の塾に通っていましたが、中学3年生の時に辞め、独学に切り替えました。受験やテスト対策を重視した勉強よりも、今の自分の学力や不得意な部分とじっくり向き合って勉強したかったからです。特に数学は、基礎が理解できていないまま発展問題に取り組んでいる感覚があり、一度立ち止まって自分に合った勉強方法を模索しました。
塾を辞めてからは、自分でオリジナルの教科書を作って学習しました。ネットや参考書、学校の授業内容をもとに重要なポイントをまとめ、ノートに整理するという方法です。教科書に線を引いたり音読したりすることも大切ですが、私はより能動的に学ぶことで記憶に定着しやすくなると考え、このやり方を取り入れました。何より、自分なりの方法で学ぶこと自体が楽しく、勉強へのモチベーションも高まりました。
苦手だった数学については、基礎から丁寧にやり直しました。どうしてもわからない部分は、大学で理系を専攻している兄や数学の得意な友人に教えてもらいながら理解を深めました。結果的に、大学受験では数学を使うことはなかったのですが、自分の理解度に向き合って勉強したことで、苦手意識を克服できたことが大きな収穫だったと思います。
━━大学受験で大変だったのはどういうところでしたか。
私の場合、高校3年生の7月上旬にカナダから帰国し、そこから受験対策を始めるというタイトなスケジュールが大変でした。東北大学教育学部のAOⅡ期を受験するためには、評定平均が4.3以上必要だったのですが(2024年入学当時)、留学していた私は帰国後最初の定期テストの成績が出願の可否を左右する決め手になるため、とても緊張感がありました。教科書をノートにまとめ直したり、自分で考えた語呂合わせを使ったりしてひたすら詰め込んで覚えました。必死に取り組んだ結果、どうにか評定基準を満たすことができ、最初の関門を突破しました。
次に苦労したのは、願書とともに提出する志望理由書の作成です。文章を書くこと自体は好きでしたが、学校の先生に3回ほど添削してもらい、他にも総合型選抜に特化した塾が行っていた無料添削でも1回チェックを受け、何度も書き直しました。その過程で、「自分は何を学びたいのか」「何のために大学に行くのか」と自問自答し、考えを深めることができました。最終的には、自信を持って提出できる志望理由書になったと思います。
その他、小論文や面接対策も、学校の先生方にサポートしていただきながら準備を進めました。タイトなスケジュールの中で集中して取り組んだ結果、無事に合格通知を受け取ることができました。 私の受験の道のりは少し特殊だったかもしれませんが、この経験から言えるのは、まわりを気にせず「自分に合った勉強スタイルや受験方法を見つけ、それに自信を持って取り組むこと」が大切だということです。自分に合っているものや、自分が本当に学びたいことを探究する姿勢は、大学に入ってからも生かされると思います。
非行に走る子どもたちと関わる心理専門職に目指す。
━━小川さんの将来の夢や目標を教えてください。

これから留学をしたり、研究室に配属されたりしながら学びを深めるにつれて、進路がより明確になっていくと思います。現時点での私の目標は、少年院や少年鑑別所で働く心理技官 (矯正心理専門職)に就くことです。そのためには公認心理師の資格を取得する必要があり、受験資格が得られる修士課程までは修了したいと考えています。
さまざまな境遇のもとで生きる子どもたちと向き合い、家庭環境や障害などに苦しむ彼らの心に寄り添うことは簡単ではないかもしれません。しかし、その課題に向き合えるだけの知識や経験を、東北大学での学びを通してしっかりと培っていきたいと思っています。
■小川さんのある一日
6:30 起床
時間に余裕を持って起床しゆっくりモーニングルーティンを済ませます
8:30 登校
8:50 1限「キャリア関連学習」
留学生と一緒に受ける英語の講義でキャリア形成の理解を深めます
10:30 2限「学問論演習」
グループを組んで「漫画における年代別の目の変化」について研究します
12:00 お昼休み
一緒に講義を受けた友人とランチ
13:00 3限「教育の制度と経営」
教職課程の講義を受けます
14:40 4限「英語ⅡA」
必修の英語の授業を受けます
16:15 帰宅後、英会話のアルバイト
20:00 夕食後に課題をします
22:30 就寝

夜と霧【新版】
著者:ヴィクトール・E・フランクル
訳者:池田 香代子
出版社:みすず書房
発行:2002年11月
精神科医ヴィクトール・E・フランクルが、ナチスの強制収容所での体験をもとに書いた一冊。過酷な状況の中でも「生きる意味」を見出すことの大切さが描かれており、自分や大切な人が迷った時に何ができるのかを考えるきっかけになる。

Profile
小川 ひなたOGAWA Hinata
神戸大学附属中等教育学校出身。高校2年生の時に1年間のカナダ留学を経験し、3年生の夏に帰国。その後、AOⅡ期入試で東北大学教育学部に入学。国際混住型学生寄宿舎「ユニバーシティ・ハウス」に入寮し、多国籍な環境で刺激を受ける。2年次からはオランダの大学に留学し、心理学を専攻する予定。